しなのいえ日記
リノベ徹底解説「稲田の家」
お子様の中学校入学に合わせて、一人暮らしのお父様との同居を決意された施主様。築40年のお住まいを徹底リフォームして、ご家族皆様が笑い合い、いつでも明るく過ごせるお住まいに生まれ変わります。
(1) 建物診断(インスペクション)
大きな工事でも小さな工事でも、まずは住宅の状態をしっかりと把握することから始めます。お住まいは千差万別。同じ時期に建てられた同じ木造のお住まいでも、住み方によって建物の劣化状態が全く変わってきますから、調査をしないことには、御見積も出来ませんし、プランもご提案できません。
外部は築40年ですから、それなりの劣化が進んでいる状態です。
外壁の金属サイディングは、穴が空くところまでは進んでいませんでしたが、サビが発生しておりました。
竪といも同様にサビが発生しています。白い軒天には雨染みの跡がありました。雨漏れが起きている可能性もありそうです。
屋根部分です。木製の破風・鼻隠しの塗装が剥げてしまっております。まだ腐ってはいないようですね。
竪とい同様、軒といもサビが発生しています。穴はまだ空いていませんがかなり薄くなっているようでした。
2階部分の屋根は瓦でした。当時は、防水の処理も完全ではありませんでしたので、今後も住み続けることを考えると何かしらの対応が必要になってくると思います。
内部は、洋室は木目の化粧シート(木ではない)で、和室はせんい壁で仕上げてありました。
化粧シートは拭き掃除が楽でいいのですが、なにかをぶつけたりして傷がついたりすると、とても目立ってしまいますよね。
せんい壁は、汚れや窓付近の雨染みがありましたが、ボロボロと落ちてくるほどの劣化ではありませんでした。床は斜めに傾いてしまっているようです。
(襖に懐かしいポスターが。。私の実家にもありますww)
住宅診断では、建物の外観や内観だけでなく、床下や小屋裏も見ます。
まずは床下。床下はこんな感じになっています。
床下では、 シロアリによる被害や、地面からの湿気による腐れがないか、キッチン等の配管からの水漏れがないかを確認します。
また、建物の構造を確認できるのも床下です。基礎や柱がどこにあって、建物をどのよう支えているのか。筋交いがどこにあるか。どのように固定されているか。全てくまなく確認します。
稲田の家は築40年。旧耐震基準である昭和56年以前に建てられた建物です。そのため耐震性能に不安があります。また、この時期の建物は、建築中に大工の判断で、図面とは異なる施工を行うことがよくあったので、図面がしっかり揃っていても診断の際にしっかりと確認する必要がありますね。(稲田の家では、3ヶ所ほど筋交いの位置や仕様が変わっているところがありました。)
上の写真の中に、筋交いが見えているのが分かりますでしょうか。写真中央のやや右、斜めに入っている木が筋交いです。(ちなみにその右が柱です)
これだけ見やすい状態は、とってもラッキーです!場合によっては板が張ってあって見えないことも。。そんなときには、僅かな隙間からドライバー等を差し込み、その先端の感触で筋交いがあるかどうかを確かめる必要があるので大変なんです。。
外壁の断熱材も見ることができました。断熱材は、1980年頃から住宅にも設置されるようになりましたが、当時はその施工方法についてあまり認知されておらず、「ただ入れるだけ。」という状態でした。そのため断熱材がせっかく入っているのに、その効果を発揮していない状態という建物がほとんどです。(床下から外壁の断熱材が見える状態というのも、実はNGです。)
床下には断熱材はありませんでした。
ちなみに、床下は高さが30cmくらいしかありませんから、床下での移動はほふく前進となります。その状態で調査をするわけですから、結構たいへんです。ちなみに汚れてもいいようにこんな防護服を来て調査します。
(このオッサン、着こなしてるな~。ん~、かっこいい!)
次は小屋裏です。
ここでも床下同様、柱・筋交いの位置など構造の確認をします。
他には雨漏れによるシミがないか確認します。画面奥の方、分かりますでしょうか。雨染みが確認できました。
(2) プランニング 打合せ
建物診断の内容をもとに、プランニングを行います。事前に施主様から、今後どのように住まわれたいかをお聞きし、それを反映させながらの作業となります。
診断の結果、工事をしても直せないような、構造上の重大な欠陥がある場合には、リフォームをお断りする場合もあります。これは、リフォームにせっかくお金を掛けて快適に過ごせるようになったとしても、安全に暮らすことができなければ意味がないという考えからです。多くの人は、一生の中で家づくりを何度もできるわけではありません。我々は、お客様の今後の人生を背負ってお仕事をしているわけですから当然のことですね。
さて、稲田の家では、耐震シミュレーション、温熱環境シミュレーションの結果から、以下のリフォーム工事を行うことになりました。
<1. 耐震工事>
<2. 断熱工事>
<3. 屋根工事>
<4. 外壁工事>
<5. 2階及びLDKの改装工事>
これらの工事を行うことより、
建築基準法上の一般的な新築住宅よりも地震に強く、省エネ性能の高い、
安全で快適な住まいに生まれ変わります。
※具体的なデータで申しますと、
耐震性能:上部構造評点 0.42 → 1.15 (一般的な新築住宅は約1.0)
省エネ性能:Ua値 2.45 → 0.33 (一般的な新築住宅の目標値は0.75)
(3) リフォーム工事
さてここからは、いよいよ工事となります。
<1. 耐震工事>
耐震シミュレーションの結果、外壁を全て剥がし、柱や筋交いなどの接合部分の補強と、外周全面に構造用合板を張ることにしました。
外壁を剥がすと、柱や筋交いが見えてきます。地震による揺れが起きたとき、住宅が倒壊しないように筋交いが支えとなってくれることは皆さんご存知の通りです。実はそのとき、柱には、土台や梁から抜けるように作用する力が働きます。この力により柱がスポッと抜けてしまうと、住宅は簡単に倒壊してしまいます。
そのため、柱が抜けないよう、柱や筋交いのつなぎ目部分を「接合金物」により補強する必要があります。
現状は「かすがい」というコの字型の釘のようなもので柱と筋交いが固定されていました。しかし、「かすがい」は地震のような大きな力に耐えることはできませんし。そもそも柱がしっかりと固定されておらず、これでは簡単に倒壊してしまいます。
別の場所ですが、「接合金物」を取り付けた後の状態です。何本ものビスで固定しますので、がっちり固定されていますね。
このように金物をどんどんつけていきます。隅柱(建物の角の柱)は、1階と2階の柱が一体となるように大きな接合金物を取付けます。
接合部分の補強ができたら、その上に構造用合板を張っていきます。
外周全面に張ることで、建物の耐震性能がグンと上がります。
<2. 断熱工事>
断熱工事は、耐震工事のやり方に合わせて、臨機応変に手法を変えます。特に壁の断熱工事は、それだけで考えると高コストになってしまいがちです。耐震工事や水廻りリフォーム(特に浴室)の「ついでに」やるようにすることが大事です。
※本当は、年中快適に過ごせるようになる断熱工事は、水廻りリフォームよりも、とってもおすすめな工事なんですが、中々お金をかけづらいようで。。寒い冬でも暑い夏でも、年中春のように過ごせる家ってすごい魅力的なんですけどね。
稲田の家では、下のように工事を行います。
断熱工事箇所 | 工事前 | 工事後 |
■床 | 断熱材なし | グラスウール吹込135ミリ |
■壁 | グラスウール50ミリ | 付加断熱(グラスウール50ミリ(既存再利用) + 高性能グラスウール120ミリ) |
■天井 | 断熱材あったりなかったり | グラスウール吹込400ミリ |
■窓 | アルミ枠シングルガラス | 樹脂枠トリプルガラス |
■玄関ドア | アルミ2枚引違い戸 | 高断熱開きドア |
はい。フルスペックです!!
ちなみに壁の断熱材で既存のグラスウールを再利用するのは、内部結露(壁の中での結露)を防止するためです。今回の工事では、既存のグラスウールを高性能グラスウールに入れ替えると、内部結露が発生する可能性があったため、既存のままとしています。(興味のある方は桑原までお問い合わせくださいませ。超マニアックなお話をさせていただきます。)
耐震工事のときにも出てきましたが、外壁を剥がした状態がこちらです。
当時の建築物としては、しっかり市断熱材が入っている方ですが、下の方を見ると隙間がありました!
断熱材は空気の流れを止めることにより断熱効果を発揮しますが、これでは空気が流れてしまい、断熱材本来の効果が発揮できません。(黄色い断熱材が黒く汚れているのがその証拠です。この汚れは床下の埃。断熱材が腐っているわけではありません。)
※建物診断のときに、床下から外壁の断熱材が見えるのは良くないと言ったのは、このためです。
そこで、空気が流れるのを防ぐため、シートで隙間を塞ぎます。(気流止め)
その後、新たに断熱材を敷き込みます。
ここまでが柱部分の断熱工事です。(充填断熱)
ここから付加断熱に発展していきます。
先程、耐震工事のために張った構造用合板の上に、
調湿気密シートを貼ります。
調湿シートの上に木下地を組みます。
※窓を高断熱サッシに入れ替えました。
※玄関ドアも寒い寒いアルミ引き戸から、断熱性能の高い開きドアに変更。
この上に、高性能グラスウール120ミリを敷設します。
その上に防水シートを張って付加断熱完了です!
<3. 屋根工事>
雨漏れを起こしている瓦屋根を解体し、金属屋根に葺き替えます。実はこの工事、雨漏れ対策でありながら、耐震工事も兼ねています。
瓦屋根を金属屋根に変更すると、屋根の重さは3分の1以上軽くなり、建物の重心を低くすることができます。重心が低い位置にあると地震の揺れの影響を低減できるため、結果的に耐震にもつながるということです。
瓦屋根を撤去します。
下から見ると、何だか幻想的。
防水のためルーフィングを敷設します。
その上にガルバリウム鋼板屋根を葺いて完了です!
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