しなのスタイル実例集
モミジの家
物件情報
- 所在地
- 軽井沢町
- 家族構成
- 大人2人
- 延床面積
- 87.77㎡(26.5坪)
- 耐震等級
- 耐震等級3
- Q値
- 1.10W/㎡K
- Ua値
- 0.24W/㎡K
- 暖房負荷
- 43.5kWh/㎡
- 冷房負荷
- 5.3kWh/㎡
- 冷暖房
- パネルラジエーター・エアコン
朝、目を覚ましたら、階段を上がってキッチンでコーヒーを淹れる。
振り返った窓には、色づいた木々の鮮やかな錦模様。
庭へ来る小鳥の声を聴こうと、ダイニングの窓を静かに開ける。
さあっと室内へ流れ込む冷たい空気。
外へ出るときは、厚手の上着が必要かな。
Tシャツ姿のまま窓の外を眺めながら、コーヒーをゆっくりと飲み干した––––
映画のワンシーンのような光景が広がるのは、2025年春に完成した『モミジの家』。
敷地の周りを囲むように生えていた楓の大木を生かして建てられた、二階リビングのお住まいです。
オーナーのO様は埼玉県出身。20年ほど前、ご両親が軽井沢の閑静なエリアにある中古の別荘を購入し、春から秋までの休暇を過ごす場所として、家族で大切に維持されてきました。
「別荘だったときは、苔と楓の庭に面した和室があって。その部屋から見上げる紅葉がとても好きでした」。
時が経ち、だんだんと集まって過ごす機会も減ったため、家族からは管理も大変だし手放そうか…という話が出ていたのだそう。
O様はもともと住宅建築に興味があり、とりわけ建築家・飯塚豊さんの設計に心惹かれるものがあったといいます。「同じころに埼玉の実家を建て替えたんですが、防火対策など地域の制約が多くて。それなら別荘の場所に、自分が暮らしたいと思える『木の家』を建てようと決めたんです」
こうして、長野県でもとりわけ寒さの厳しい軽井沢に移住を決意。別荘時代は冬に滞在したことがなく、秋でも灯油ストーブ3台を使ってようやく「人がいられる室温になった」という経験から、「デザインに納得できて、寒い場所でも快適に暮らせる家」の情報を熱心に調べたといいます。そうして見つけたのが、飯塚豊さんが設計顧問を務める工務店・しなのいえ工房でした。
「いくつか実例を見学に行って、飯塚さんの合理的な設計スタイルをはじめ、さまざまな建築手法を熱心に勉強して取り入れていることがわかりました。高断熱の木の家と、自分の好きな住宅のスタイルが両立できると思い、依頼を決めたんです」
設計を始める前にO様がリクエストしたのは「苔むした庭と周囲の木々がつくる美しい景色を、家の中から楽しめること」。そこで設計を担当したスタッフは、一階から見上げるのではなく、木々の梢と同じ高さで景色が楽しめる二階リビングを提案しました。
「個室と水まわりは一階、生活の中心となるLDKを二階にすることで、二階は間仕切り壁の少ないオープンな空間がつくれます。『モミジの家』は各階の面積が13.5坪ですが、切妻屋根のカタチを生かした斜天井と、視線を外へ導く窓の配置で、実際の数字よりも広く感じられるよう計画しました」と設計スタッフ。その言葉どおり、玄関ホールから吹き抜けの階段を上がっていくと、二階は建物の端から端まで見渡せるワンルームになっています。壁の三方に開いた窓は今が盛りの紅葉を額縁のように切り取って、まさに絶景。
なかでも特等席は、窓前に設えたダイニングとカウンターデスク。毎朝ここで庭を訪れる小鳥の声をBGMにコーヒーを飲むのが習慣になったといいます。「いろいろな野鳥が目の前の枝にやってくるのが楽しくて、鳥の図鑑や双眼鏡も揃えました。この家に越してから、テレビはほとんど見なくなりましたね。天気や時間によって景色がどんどん変わるので、見飽きることがないです」
新居に暮らし始めてから、断熱性能の高さにも驚いているそう。『モミジの家』の空調は窓下のパネルラジエーターとエアコンのみですが、肌寒い晩秋の軽井沢でも、室内はエアコンなしで20℃~21℃をキープ。一階・二階ともほぼ温度差はなく、家にいる時間の大半を「はだしにTシャツで過ごしています」とO様。
「建てる前に、しなのいえ工房さんの家を何軒か見学に行って。そうしたら住んでる方が口々に『冬寒くない、厚着しなくて全然平気』と……当時の自分は『長野県で、そんなの嘘でしょ~』と思ってたんですが、今は『先輩オーナーさんの言ってたこと、本当だった……』って実感しています(笑)」
「自分が思い描いていた『家』を実現できたことに、とても喜びを感じます。注文住宅の家づくりは大変なことも多かったけれど、しなのいえ工房の皆さんが細やかに相談に乗ってくれて楽しかった。この家に暮らし始めて、僕の人生は変わりましたね」
そんな嬉しい言葉を聞かせてくださったO様。
軽井沢の静かな森に、今日も満ち足りた一日の始まりを告げる小鳥のさえずりが、優しく響いています。


